シャントの穿刺方法として、縄ばしご法が世界的に推奨されています。下記写真が縄ばしご法の例ですが、毎回5ミリほど穿刺部位を変えるので、針穴がきれいに並びます。長期間シャントの変形が少なく、狭窄も起こしにくいと言われ世界標準となっている方法です。一方、毎回新しいところを穿刺するのでとても痛いです。

同じようなせまい場所を繰り返し刺していると痛みが少なくなります。ですが、この方法はフタコブ法(Area法)と呼ばれコブとくびれを作ってしまうため推奨されていません。これを長年続けてゆくと下の写真のようになりやすいです。特に女性の方で、膨らんだシャント血管が見えないように、暑い日にも長袖を着ている方もいらっしゃいます。自身の針穴を見ていただき、整列していなければこの写真のような変形を避けるために縄ばしご法に変更するのがおすすめです。

そこで、東神クリニックで行っている第三の穿刺方法、ボタンホール穿刺をご紹介します。1972年に発表された、同じ針穴を繰り返し差し続けることにより、トンネル状の針の通り道を作る方法で、このトンネルをボタンホールと呼びます。

しかし、この方法は下記論文一覧にあるように感染が多いことが問題視されており、一番上の赤字のカナダのカルガリー大学の研究ではなんと20回に1回感染したと報告しています。通常ボタンホールは透析後に乾燥放置されかさぶたが強固に付着して取りにくく、針を刺すときに押し込んでしまいます。これが感染を起こしていると考えられます。

2010年、朋進会でボタンホールのかさぶたを乾燥させず、ふやけた状態を保つ湿潤治療を開始し、かさぶたが小さくなるにつれて感染が著明に減少しました。この方法によるかさぶたの抑制効果を下の写真に示します。

同年、米国の看護師スチュワート・モット氏はボタンホールのかさぶたを液体石鹸でふやかして拭き取る方法を発表し、近年54000回感染が起きなかったと報告しています。(https://homedialysis.org/life-at-home/buttonhole

東神クリニックでは、湿潤治療とモット氏の方法を組み合わせて感染を抑えています。

私がヨーロッパ透析移植学会で発表した痛みのデーターです。ボタンホール穿刺の方が痛くないことがわかります。

これもヨーロッパ透析移植学会へ報告したスライドですが、普通に針を刺しているとストレスマーカーの唾液アミラーゼが70も跳ね上がります。すごくひどいストレスと言うことがわかります。一方、ボタンホール穿刺の方は、ストレスマーカーである唾液アミラーゼの上昇が全くありませんでした。これは、ストレスがほとんどかからないことを表します。

ボタンホール法には、痛みとストレスの少なさに加えて、フタコブ法と比べ、シャント血管が変形しにくいという利点もあります。女性の方には特にうれしい効果です。ボタンホール法を行われている方のシャントの写真をご紹介します。将来にわたり、きれいな腕ですごしたいとお思いでしたら良い方法と思います。

https://toushin.houshinkai.net/dialysis/pictures2/

ボタンホール法は、痛みを減らし、ストレスをなくし、シャント血管の膨らみによる腕の変形を防いでくれます。湿潤療法をいち早く採用した当院では、昨年から一例の感染例もなく経過しており、安全に行えております。英語論文や国際学会などで発表した内容は院長のプロフィールに公開しております。
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